あるがままの現実を捉える Factfulness: Ten Reasons We're Wrong About The World - And Why Things Are Better Than You Think
ビル・ゲイツ氏のブログにこの本を読んでから発展途上国という表現を使わないことに決めた、とありその理由を詳しく知りたいと思い本書を手に取りました。
Factfulness: Ten Reasons We're Wrong About The World - And Why Things Are Better Than You Think
- 作者: Hans Rosling
- 出版社/メーカー: Sceptre
- 発売日: 2018/04/03
- メディア: ハードカバー
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本書は人々の世界認識が歪んでいることを示した調査結果から始まります。人間は世界について正しく理解しているどころかバイアスによって実態よりも悲観的に世界を見ているといいます。質問の一部は以下の通り、
- 世界中で何割の少女が義務教育を終えるか
- 世界人口の過半数はどの程度の所得レベルの国々に住んでいるか
- 今日の平均寿命は何歳か
- 将来の極貧人口は増加するかどうか
これらの質問に対して各国の正答率は軒並み低く30%を切っていました。この結果は何も知らないチンパンジーのほうが正答率が高かったとして報道もされました。筆者は事実に反した世界認識の原因を人間が誰しも持つ10の思考の癖に求め、その対処法を本書で提示します。
10の思考様式
- 二分法
- 悲観主義
- 直線的理解
- 恐怖心
- 規模感
- カテゴリー分け
- 諦観
- 責任追及
- 単眼思考
- 緊急性
冒頭のビル・ゲイツ氏の記事は1の二分法と関わります。私達はよく先進国と発展途上国の2つに世界を分けて考えがちですが、それは実態に即していない過去の世界だと筆者は指摘します。
上図は縦軸に平均寿命、横軸に所得がプロットされています。平均寿命が長く、所得も大きいほど右上に、その逆は左下に集まります。右上に近づくほど発展していると言えます。1967年時点では所得レベル1とレベル2に多くの国が属していたことがわかります。
時は進んで2018年。多くの国が所得レベル2,3に集まっており、先進国と発展途上国という枠組みがもはや現実にそぐわないことが、上図から見て取れます。そこで、筆者は過去の枠組みに代えて所得に応じて四段階に分けることを提唱します。所得レベル1から2へ、2から3、と経済発展の度合いを比較することが可能になります。
本書では、先進国と発展途上国のように実態と人々の認識の乖離がなぜ起きるのかまで解説されているので、興味を持った方はぜひ読んでみてください。画像はGapminder*1からお借りしました。同サイトは筆者が率いていた組織の公式サイトで、factfulnessを発信しています。引用したバブルチャートだけでなく各所得レベルでの暮らしぶりの画像、調査に使われた質問なども見ることができます。