【感想】忘れられた戦争 『第一次世界大戦 忘れられた戦争』(山上 正太郎)
本書を手にとったきっかけ
中国進出の足がかり、後に米国との対立を生むことになった日本にとっても意義深い戦争だった割にはよく知らなかったからです。
内容(「BOOK」データベースより)
1.戦争の経緯
1914年オーストリア皇太子フェルディナント大公夫婦が共同統治国ボスニア・ヘルツェゴヴィナの訪問中にセルビア民族主義青年に暗殺された。*1オーストリアはセルビアに対して最後通牒と宣戦布告、以後戦争に突入する。
オーストリアはドイツと、セルビアはロシアと同盟関係にあり、オーストリア・セルビアの戦争に巻き込まれる形で戦争が始まります。*2また、ドイツはイタリアと、ロシアはフランス、イギリスと同盟を結んでいたので、イタリア・フランスも参戦することになりました。独・墺・伊の同盟を三国同盟、英・仏・露の同盟は三国協商と呼ばれます。*3
2.日本への影響
・債務国から債権国へと転換
日露戦争の戦費を国債など賄った日本は債務国でした。しかし、第一次世界大戦の勃発とともに各国が総力戦体制に移行すると、アジア市場からヨーロッパ企業の撤退が始まり、市場の空白に乗じて日本企業が市場シェアを伸ばしていきました。また、ヨーロッパからの輸入が止まり輸入品が入ってこなくなったことが輸入品の国産化への道を開きました。1915年から1920年までの好景気は大戦景気と呼ばれます。*4
・中国進出のさらなる足がかりを取得
日本は1914年10月に対独参戦し、ドイツが有していた中国の青島・膠州湾租借地を占領しました。その後、密約も含めて諸外国に日本がドイツの中国権益を継承することを認めさせます。また、袁世凱政府に対して、21か条要求を突きつけ受諾させます。*5
・アメリカとの対外関係
日本の露骨な中国進出が同じく中国へと進出しようとしたアメリカの警戒心を高める結果になりました。政策上の対立はありつつも、21か条要求を関係の底に以後二国間関係は安定化していきます。*6
3.世界史的な意義
・ドイツ・イタリアでファシズム醸成の土壌が生まれる
・国際連盟を始め平和維持を志向するワシントン体制が発足
・ヨーロッパの衰退とアメリカの台頭
4.雑感
第一次世界大戦はヨーロッパの疲弊とアメリカの台頭を決定的なものにした戦争ですが、そこに至るまでのアメリカ史と以後の対日史をこれから追っていきたいです。