徒然なるままに読書

書評から日々の考え事まで綴ります

書評『秋の牢獄』

あらすじ    著:恒川 光太郎
十一月七日水曜日。女子大生の藍は秋のその一日を何度も繰り返している。何をしても、どこに行っても、朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。悪夢のような日々の中、藍は自分と同じ「リプレイヤー」の隆一に出会うが…。世界は確実に変質した。この繰り返しに終わりは来るのか。表題作他二編を収録。名作『夜市』の著者が新たに紡ぐ、圧倒的に美しく切なく恐ろしい物語。

 

  牢獄からの解放をテーマにした短編集だ。いづれも退屈な日常に、神秘的な家に、洗脳教育と幽閉に囚われた者がどう振る舞うか、そしてその牢から解かれた者はどう感じるのだろうか。

 「秋の牢獄」

 日々似たような日を過ごしてしまったと感じることが多いが一日を何度も何度も繰り返すことは思いもよらないだろう。そんな状況に陥ってしまったとき何をするだろう。映画、読書、友人と遊ぶだろうか、それとも思い切って旅行するか。それでも一日のループを終わらせるために死を願う。繰り返される一日に存在する異質な北風伯爵が死神としてループの幕を下ろす。

 「神家没落」

 ひょんなことから世俗から離れた「家」での生活を余儀なくされた。この家から離れるために新たな家守を家に引き入れなければならない。やっとのことで家から離れることができたが「家」での超然的な生活と比べると世俗に塗れた生活には、自由には耐えられない。そこで囚われの身でも一種の安らぎ、安定があったことを知る。それえに対しなんて世界は不安定だろう。「家」は失われたが今でも求める気持ちは変わらない。

 「幻は夜に成長する」

 幻術が使えること、後継者であったことから教団に囚われる。幻術を使い人に仮初の安寧を与えながら、人から得た地獄、自身の体験を糧に怪物を育てていく。そして機が熟したとき自分で鎖を断ち切り自由を享受し歓喜する。

 

 恒川光太郎さんの作品は日常のなかに異界への扉が開いていることを連想してしまう独特の世界観と平易ながらも美しい文体で引き込まれてしまう。

 

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