徒然なるままに読書

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ギャンブルの先に見たものは 映画『ハスラー』

あらすじ
ギャンブルの世界に生きる男たちの息詰まる死闘と、全編の3分の2に渡る白熱のプール・シーンを、流麗なジャズのメロディにのせて描く迫真のドラマ。抜群の才能を持ち、若くして名をあげたハスラー、エディがシカゴ一の勝負師ミネソタとの宿命の対決に挑んでいく。

 どんな映画か?

 ハスラーであるエディがシカゴ一のファッツに激戦の上敗れ一旦はビリヤードを離れサラの下へ身を寄せる。そこで愛を育むが,ある不幸を経て再びファッツと対決する。対決後エディはギャンブルよりも大切なものがあったことを痛感する。

 

感想

 ハスラーとは,日本では「ビリヤードをする人」という意味が定着しているが,本来はギャンブルで相手を騙し金を巻き上げる勝負師である。本作でもビリヤードの勝敗によって掛金の喪得をしている。エディはファッツが参ったというまでプレイし続け40時間を経過してもなお挑もうとする。途中で目標金額に達しながらもだ。しかもファッツが心機一転を図り,エディは酒を呷り敗北する。なにがそこまでエディにビリヤードの勝利へ執着させるのか。

 敗北後,エディは駅であったサラに惹かれ,同棲する形になる。また,サラの着飾っていた嘘も受け入れそれまでの勝利への執着が薄れる。いわば愛が勝っている状態である。実業家ゴードンの誘いを受け,まずはフィンドレイと対決することに。負けがかさもうと執拗に勝負を迫るほど再びギャンブルに熱中していく。その浅ましい姿を見,やめようとしなかったエディ,追い打ちをかけるゴードンによってサラは「異常者」「ふつうじゃない奴ら」などと書き残し自殺する。これはゴードンを指すのか,はたまたギャンブラー一般か。サラを失ったことでギャンブルにのめりこんでいた自分の異常さを自覚したエディはファッツとのリベンジマッチで圧倒的強さで下す。ゴードンからエディがファッツに敗れたのは人格の未熟さ故と指摘され,サラの死によって人格が成熟し,ゴードンから大手ビリヤード場の出禁を言い渡されても平然とするまでになる。そこには冒頭のギャンブルに執着する姿はなく,互いに腕を讃え合うエディの姿があった。

 ギャンブルの熱狂から救ったのは愛する人の死であり,人格も成熟するに至った。