徒然なるままに読書

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フランス革命は中央集権をもたらしたのか 書評『旧体制と大革命』

あらすじ     著:アレクシス・ド・トクヴィル
フランス革命後の社会は、旧体制(アンシャン・レジーム)の社会から截然と区別される―通説と化してしまったこの命題を否定するところから、トクヴィルは出発する。中央集権のもとでの行政の専制化、画一的支配の浸透、パリ一極集中、こうした要素は革命がもたらしたものではなく、すでに旧体制のなかに用意されていたものだった。近代デモクラシーは必然的に平等化への道を進んだが、公的なものとの関わりを保障する「政治的自由」は、旧体制時代にもはや息の根を止められてしまっていた。近代は「画一化」と「自由の窒息」を引き受けなければならないのか?

 どんな本か?

 フランス革命の前後でフランス社会は変貌を遂げたという通説に対する反論として本書は書かれた。『アメリカのデモクラシー』という大著の次に書かれたフランス革命に対する分析である。

 

感想

 自説を証明するために革命以前の膨大な資料を集めそれらを読みこなししかも整理することで補強の材料にもしている。この丹念さはデュルケームの『自殺論』にも通じるものがある。

 

 貴族が凋落していく中で力をつけた学者や裕福な商人,農民など第三身分の人々が徐々に勢力を広げていく。他国では見られないような土地の所有が農民などにも広がりもはや貴族といえども広大な土地を手にしているわけではなくなった。実質的なパワーゲームが均衡していくと貴族は体裁に気を配り免税特権に執着していく。特権が付与された官職が売買されるようになるにつれ中央政府と貴族が接近していくがその廃止を以って蜜月も終了する。以後官僚が派遣されることになり政府と貴族の距離が開いてゆく。ただし貴族に対する課税は及び腰だったが。中央集権になってゆくなかで各階級や中間団体など個人が所属する場が細分化され階級を超えての団結が困難となりなおさら中央集権に対抗できなくなっていった。行政に権力が伴うことで道路の整備を強いることができ国内の移動に何も苦労を要することもなくなり全国で画一化が進む。なかでも首都であり芸術、学問、政治などあらゆる中心地となったパリが他の都市を抑え全能となった。政府が力をつけ農民の負担を軽くしようとすると今まで運命と思い諦めていた農民がその負担に怒り立ち上がる。革命へと突き進むのである。長らく政治参加の自由が失われていたので穏便な手段を経ずに革命という暴力によってその怒りを表現することとなった。

 

 主張は以下の通りである。従来フランス革命の成果と見られていた行政の強大化,パリの一極集中,中央主権は旧体制下で既に現れていたのであり革命を通じてより顕著になったにすぎない。