徒然なるままに読書

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自由主義における不朽の古典 書評『自由論』

あらすじ    著:J.S.ミル
言論の自由をはじめ、社会生活における個人の自由について論じ、個人の自由の不可侵性を明らかにする。政治干渉の増大に対する警告など今日なお示唆を与えられるところ多く、本書をおいて自由主義を語ることはできないといわれる不朽の古典。

 どんな本か?

 トクヴィルが指摘した自由主義から帰結する多数者の横暴から少数者を守るために言論の自由をはじめ政治参加の自由を論じる。そして民主主義が健全に機能するためにも自由と多様な状況を必要条件とした。

感想

 ミルといえば人が自由に振る舞えるのは他者に危害を及ぼさない限りであるという他者危害原理を樹立したことが有名である。自由の限界を示したものであるが背景にはトクヴィルが指摘した多数者の専制があると考える。多数者の専制とは、民主政治は大多数のひとびとの意見に依存するようになるので理性的で一貫した選択よりも一時的な感情に流された決定が生まれやすくなる、とするものである。これとミルもその系譜にいる功利主義では少数者の犠牲の上での多数者の繁栄が是とされる危険性がある。制限のない自由と民主主義では少数者を抑圧することが起り得るのでこの他者侵害原理を策定した。

 

 少数者が意見を発表しやすいようにと言論の自由を擁護する。その理由として人間は過ちを犯すこと、意見を戦わせることで意見をより深く理解することができることが挙げられている。意見を討議することで理解が深まり納得すればよし、しなくとも参加することに意味があり無駄にはならない。多数者の意見が誤りで少数者の意見が正しいこともある。意見が事前に出てたことで次の行動へと移せる。また日本では全員一致の賛成が正しいと尊ばれるが、タルムードにサンヘドリン規定「全員一致の議決は無効」というものがある。これは多様な意見があるなかで全員の意見が一致することはまずなく、あるとしたら全員が誤っているか感情に流されているかと考えその議決を無効とする規定だ。人間は誤りを犯すと考えられているからだ。

 

 民主主義が健全に機能するために自由と多様な状況が必要だと説いている。日本では同調圧力や奇妙な平等意識が強いせいでこの点が十分に達成されていない。長時間の残業や優秀な子どもに飛び級を認めないのもこれらの外圧が強いためである。

 

 

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