映画『思い出のマーニー』
あらすじ 監督:米林 宏昌
心を閉ざした少女杏奈は、ぜんそくの療養を目的に親戚が生活している海沿いの村にやって来た。そんなある日、彼女の前に誰もいない屋敷の青い窓に閉じ込められた、きれいなブロンドの少女マーニーが姿を見せる。その出会い以来、杏奈の身の回りでは立て続けに奇妙な出来事が起きるようになるが、それは二人だけの秘密だった。
原作はジョーン・G・ロビンソンの同名小説でイギリスが舞台だったのが映画では北海道に変更となっているなど相違点がある。
主人公杏奈とは?
スケッチが趣味で内向的な性格である。自分が魔法の輪の外側にいるように感じ孤立感を味わっている。早くに両親を失い祖母とも別れ今の養親に引き取られたこと、親と仲がぎくしゃくしていること、目が青みがかっていることからか短冊に普通になりたいと書いたり自分を醜いと思い嫌っている。
マーニーの正体
杏奈の祖母の若かりし頃の姿である。湿地屋敷にメイドとばあやとともに住んでいる。両親はマーニーをほったらかしにしメイドは意地悪でばあやからも虐待じみた扱いを受けており孤立している。
なぜ出会ったのか?
湿地屋敷とその周辺がマーニーの思い出を再現する舞台装置なのだと思う。杏奈もマーニーも孤独を感じていたこと、血縁関係にあったこと、回想の中で赤ん坊の杏奈に様々な思い出を語っていたシーンがあり杏奈もマーニーの思い出を部分的にでも共有していたことから思い出を再現できたのではないか。
劇中である老婦人がマーニーとかつて遊ぶほど仲が良かったことが明かされる。あわせて見つかったマーニーの日記を見ると杏奈とマーニーの行動が過去のマーニーと老婦人の行動と重なることがわかる。杏奈とマーニーがサイロにいたときブラックアウトした場面があるが、かつてマーニーが一人でサイロで留まっていたときお兄さんに助けられたことを覚えておらず杏奈に事の顛末を語ることができなかったので思い出の再現も中途半端になりブラックアウトとなったのでは。
相違点
原作ではアンナとマーニーの関係は友情以外のなにものでもないが映画では百合を思わせる演出となっている。杏奈はサイロでマーニーに見捨てられたと感じたことについて原作ではマーニーが見捨てるようなことはしないとフォローが入る。最後に原作での名アンナが祖母マーニーから取られたことが明かされる。
感想
杏奈がショートヘアにショートパンツと中性的なのに対しマーニーはドレスやスカートと女の子らしさが前面に押し出されており、また性格も内向的に対し活発で外向的と対照的ではあるがお互いに孤独を抱えている二人の交流は温かく見守ろうと思わせるものがある。月が照らすなかマーニーが杏奈の手を取りボートの漕ぎ方をレクチャーするシーンなどデートかと思ったほどだ。
ジブリらしい映画で風景や音楽も楽しむことができた。映画を観てすぐ勢いで原作小説を買ったが小説も映画に負けず劣らず素敵な雰囲気を醸し出している。小説のほうが心を閉ざしていた主人公の変化や成長を感じられるので小説もお勧めだ。主題歌CDやDVDを買ってより世界に浸りたい。