徒然なるままに読書

書評から日々の考え事まで綴ります

書評『論語と算盤』

あらすじ    著:渋沢 栄一
日本実業界の父が、生涯を通じて貫いた経営哲学とはなにか。「利潤と道徳を調和させる」という、経済人がなすべき道を示した『論語と算盤』は、すべての日本人が帰るべき原点である。明治期に資本主義の本質を見抜き、約四百七十社もの会社設立を成功させた彼の言葉は、指針の失われた現代にこそ響く。経営、労働、人材育成の核心をつく経営哲学は色あせず、未来を生きる知恵に満ちている。 

 

  日経新聞で取り上げられていたので読んでみました。みなさんは渋沢栄一という方を知っていますか。「近代日本の設計者」「日本資本主義の父」「実業界の父」とも呼ばれその功績は多岐にわたっています。企業から慈善事業まで広く手を出しましたが有名なものだけでも日経新聞、JR、帝国ホテルなどの設立に関わっています。彼が人生の指針としたのは「利潤と道徳を調和させる」こと、それがタイトルでもある論語と算盤なのです。

 論語とあるように人格の修養に多くの紙面が割かれています。良い習慣を身に付けること、目上の者を敬うこと、大局を見て中庸を保つこと、好奇心をもち生涯学び続けることなどです。また経済・経営に関することでは目先の利益に囚われずそれが長期的に社会に貢献できるかを判断すること、人材の育成では常に仕事で油断なく仕上げさせるようにするには甘やかすよりもむしろ厳しくすること、適材適所を意識し自分の権力基盤を固めるための人選は行わないことが挙げられている。

 印象に残ったものは教育についてです。それは実学偏重への苦言を呈していること、人材が溢れかえっていることです。教育の質が向上したことで多くの人が学ぶことができるようになりました。よって人の上に立とうと志す者も多くなりました。しかし経営者といったポストはその数と比べ少ないのが現状です。それでも高等教育を受け上に立とうとし、人に使われることを嫌う人が趨勢です。けれども人に使われることのほうが適している者も多く皆が少数者になれるわけではありません。そこで彼はもっと早期の段階で人を選別することを示唆してします。諸外国の例ではイタリアにおいて小学校の段階で大学進学を希望する者、専門学校に進む者を振り分けることでしょうか。現代の日本のように大学が乱立し進学率も50%を超え大卒が溢れる状況を危惧しているように思えます。ところで教育に限らず筆者は理論と実践のバランスを説きます。本書では論語の精神と実践としての事業が上手く調和しそれが生涯を通じて続くよう努力の軌跡を見ることもできます。

 100年前に書かれた本書ですが今でもその有用性は失っていません。まずは良い習慣を身に付け、人格の修養に努めたいと思います。筆者の書いた自伝も読んでみようとおもいます。

 

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