徒然なるままに読書

書評から日々の考え事まで綴ります

書評『未来のイヴ』

あらすじ   著:ヴィリエド・リラダン
輝くばかりに美しく、ヴィナスのような肉体をもつ美貌のアリシヤ。しかし彼女の魂はあまりに卑俗で、恋人である青年貴族エワルドは苦悩し、絶望していた。自殺まで考える彼のために、科学者エディソンは人造人間ハダリーを創造したが……ヴィリエ・ド・リラダンの文学世界を鏤骨の名訳で贈る。正漢字・歴史的仮名遣い。

 

  完璧な肉体とそれに見合わない魂を持つアリシヤの恋人エワルドはただただ愚劣な彼女に絶望し自殺まで考えている。これで最後と友人エディソンに悩みを打ち明けたところ肉体から魂を取り除いてみせようと豪語される。計画が進むにつれなぜエディソンが瀆神と捉えられても仕方ない人造人間を作ろうしたかが明かされる。それはこうだ。彼の友人がある一晩の過ちからその後の人生を破滅へと歩んだのだが、その過ちの原因となった人物は傾国の美女というわけでもなくたいそう人工的、つまり化粧で飾っていたのである。恋愛において人は自身の精神が客観化された幻を見、この幻が相手の中に分けられた自分の魂の投影だと豪語する。遂に人造人間が完成した。人造人間とアリシヤとをどちらを選ぶか迫られたエワルドは人造人間を添い遂げることを決意する。

 完璧な容貌に愚劣な人間と内外ともに完璧な人造人間どちらを選ぶだろうか。人によって基準は異なるだろうが、一番の差異は生身の肉体の有無だろう。体温といったことではなく人と機械とを隔てる壁、同種かそうではないか。様々なSFでも問われているものである。『スワロウテイル』では人間社会に良き隣人として受け入れられた人工妖精、『beatless』では主人公がhIEとの共存の道を歩む。同じ姿形、意識を持った人造人間ならもう人とほとんど変わることがないように思える。

 

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