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徒然なるままに読書

書評から日々の考え事まで綴ります

映画に見るサイコパス/映画『クリーピー 偽りの隣人』

映画

 6月に公開された黒沢清監督の最新作「クリーピー 偽りの隣人」をようやく観ることができた。以下感想を書いていく。書いているうちにサイコパスの話題に移ったので、そちらが中心に。映画は隣人がサイコパスであることから起きる恐怖の事件*1だった。サイコパスから逃れる手はあるのだろうか。

creepy.asmik-ace.co.jp

あらすじ

元刑事の犯罪心理学者・高倉は、刑事時代の同僚である野上から、6年前に起きた一家失踪事件の分析を依頼され、唯一の生き残りである長女の記憶を探るが真相にたどり着けずにいた。そんな折、新居に引っ越した高倉と妻の康子は、隣人の西野一家にどこか違和感を抱いていた。ある日、高倉夫妻の家に西野の娘・澪が駆け込んできて、実は西野が父親ではなく全くの他人であるという驚くべき事実を打ち明ける。

 

 秩序型・無秩序型・混合型

 刑事から犯罪心理学者になった高倉の講義でサイコパスに関する三類型が出てくるが映画ではその内容にあまり触れずに流れたので気になったので、調べた。

  秩序型―犯行前・犯行中・犯行後にある種の秩序がみられ、入念な 

      準備や計画を練って犯行に及ぶ。証拠を残さないようにする

      など知能が高い傾向にある。

  無秩序型―唐突な犯行や無計画性などが特徴的で、知能や社会的地位

       が低い傾向にある。

  混合型―両者の特徴を備える。

 

 プロファイリングは犯人像を割り出すうえで身体的特徴や性格、癖や嗜好などを心理学的見地から特定していく。混合型の場合は一貫した特徴を拾い上げられないので、犯人像の割り出しが困難になる。

 「クリーピー」の中では香川照之演じる西野が混合型サイコパスとして登場している。周到に他の家庭に侵食し家族同士で殺し合わせる一方で自分の手を汚さないという秩序型の行動と苛立ちに任せて自分の手で殺すという無秩序型の特徴も併せ持つ。

 これまでの偏った映画歴を振り返ると圧倒的に秩序型のサイコパスが目立つ。「羊たちの沈黙」からハンニバル・レクター、「Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼」からミスター・ブルックス「セブン」、ドラマ版「ハンニバル」にも何人か秩序型のサイコパスが登場している。*2ミスター・ブルックスに至っては、被害者は見知らぬ人、生活習慣やネットでの情報収集、薬莢を回収する、掃除機をかけ証拠を回収と徹底的に証拠になり得るものを持ち帰っていく。また二重人格でもあるためややこしくしている。無秩序型のサイコパスはどちらかというとホラー映画だろうか。しいて言えばこれまた「Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼」からブルックス氏の娘だ。父同様に殺人への抵抗がなく、実際に友人を殺害している。しかし、衝動的で凶器を片付けないなど頭が足りない。

 無秩序型の犯罪者を扱う場合に刑事の冴え渡る推理よりも犯人のヘマが犯人の特定や逮捕に決定的な影響を与えてしまうので、面白さが半減してしまうからかもしれない。知らないのは私が頭脳戦を好むのもあるが。

 

サイコパスは犯罪者か

 ところでサイコパスの定義に以下のものがある。  

良心が異常に欠如している

他者に冷淡で共感しない

慢性的に平然とをつく

行動に対する責任が全く取れない

罪悪感が皆無

自尊心が過大で自己中心的

口が達者で表面は魅力的
 (wikipedia

 

  本来は専門家が訓練を受けたテストを通じてサイコパスか否かを判断するのだが、上の定義で判断すると私たちの周りにもいてもおかしくはない。実際に25人に1人の割合でサイコパスが発生すると主張する人もいる。*3
 映画のなかには殺人ではなく社会的成功を収めたサイコパスの姿も描かれる。*4カリスマ投資家であるゴートン・ケッコー(「ウォール街」)、パパラッチのルイス・ブルーム(「ナイトクローラー」)である。いずれも自身の目的のためにはなにをしてもよいという価値観であった。フィクションの映画である以上、誇張されていることもある。

 では、実社会ではサイコパスは成功を収めるのか。職業別にサイコパスがいる割合を調べた研究がある。*5見事に最高経営責任者や弁護士、ジャーナリストなど時には非情な決断が迫られたり、良心に反する仕事を行わなければならない職業が入っている。*6特定の職業ではサイコパスの気質はプラスに働くようである。

 

サイコパスに出会ったら

 殺人鬼のサイコパスに出会ったら、逃げるか通報しかない*7。だが、生活にかかわる場、例えば職場の上司がサイコパスだったらどうするか。この場合もやはりターゲットにならないように避けるか逃げるのが妥当だろう。ところが「クリーピー」では高倉が西野を殺すことになる。一切の関わりを金輪際絶つという最終的な解決である。

 

本来の趣旨:映画の感想

 お手軽に恐怖体験ができるので、これからの暑い時期にぴったりの映画だ。これからも黒沢清監督の作品を追っていくので、また役所広司とコンビを組んでほしい。

 

 

*1:家庭が乗っ取られる、家族同士の殺し合いなど尼崎市の事件を連想させる

*2:人間を弦楽器に見立てる、死体を天使に見立てる、死体トーテムポールなどグロさに力が入ってる。

*3:マーサ・スタウト博士の著書「良心を持たない人たち」副題は「25人に一人の恐怖」

*4:ハンニバル・レクターやミスター・ブルックスは社会的にも成功している

*5:経営者や上級管理職ほどサイコパスの割合が高くなる傾向。サイコパスの多い職業トップ10(英研究) : カラパイア

*6:ただし、それでも3パーセントである。

*7:決して殺人鬼を脅してはいけない