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徒然なるままに読書

書評から日々の考え事まで綴ります

ナショナリズムとはなにか 書評『ナショナリズム入門』

書評
あらすじ     著:植村 和秀
人々はなぜナショナリズムにこだわるのか? 日本と中国、ドイツ、ユーゴスラヴィアなどのヨーロッパ世界、南北アメリカなど、世界の様々な地域の多様なナショナリズムの構造を分析し、21世紀世界の最大の問題であるナショナリズムへの基礎的な知識を与える。

 どんな本か?

 世界を騒がすナショナリズムについて各地域の事例を分析しナショナリズムの基本的な知識を読者に与えることを意図している。

感想

 ナショナリズムの定義から始まる。ナショナリズムに関する有名な著者はゲルナー,アンダーソンといるが,本書ではフリードリヒ・マイネッケの「土地を持ち,その土地の上に文化的なものや国家的なもので歴史的に形成され,ネイションへの意識と意欲が目覚めてネイションとして広く強く認知されたもの」とする。

 ナショナリズムには地域型と人間集団型の二種類がある。前者がフランスなどある地域を区切って国としたもの,後者は人間集団を区切ることで東欧が代表的な国としたものである。前者のほうが近代国家との親和性が高いために近代以後急速に拡大し人間集団型国家を圧倒するようになった。

 日本の場合,両特徴を持つ。島国で一定の地域に縛られ,かつ民族も高い同一性を誇る。国境の変更がほとんどなかったので日本国というのは自明のものだった。近代化以降,欧米各国からも工業国として認知され自らだけでなく他者からも認知も得た。第二次戦争以前で勢力を拡大し,一時的に自明性が不明瞭となったが敗戦と沖縄返還により自明性も回復することとなった。

 自明性が核になるのかといえばそうでもない。典型的な国としてはロシアが挙げられる。ロシアは帝政時代からソ連ロシア連邦と絶えず膨張政策を取ってきており,大ロシアとも言うべき理想の領土を持つ国家を夢想している。そのため常に領土拡大の機会を窺っており,そこには自明性はあやふやであり,大ロシアのみを求めている。ロシアのナショナリズムは大ロシア実現のための拡大傾向が中核となる。

 中国もまた両特徴を併せ持つ。地域型として歴史的王朝が実現してきた領土を,人間集団型としては漢民族の持つネットワークとなる。

 ナショナリズムは歴史・文化を通じて培ってきたネイションへの拘りであり,極論を言えばその拘りの真偽は重要ではなくネイションがいかに考えるかにかかっている。だが,他人からも認知されるためにも拘りを裏付ける証拠が必要となる。

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