徒然なるままに読書

書評から日々の考え事まで綴ります

次の10年をいかに過ごすか 書評『続・100年予測』

あらすじ       著:ジョージ・フリードマン
「影のCIA」の異名をもつ情報機関ストラトフォーを率いる著者は、
ベストセラー『100年予測』でクリミア危機を的中させ話題沸騰! 本書はその続篇となる。
金融危機以降、国家間のパワーバランスは劇的に変化したか?
アメリカとイランがついに和解?
日本は軍事力を強化するか? 地政学が導く世界の行く末とは……。
本書では2010年代を軸に、より具体的な未来を描く。
3・11後の日本に寄せた特別エッセイ収録。

 どんな本か?

 『100年予測』の続編に当たり,2010年代を中心にアメリカ大統領が次の10年をいかに過ごすかについてを各地域別に述べている。10年という個人の選択が重みを帯びる期間にどう振る舞うかで今世紀の趨勢にも影響を与えることになる。

感想

 なぜ10年かと言えば時間を重ねるうちに個人の選択が平均に帰しあるべきところへ至るのに対し10年だけは個人の選択が影響力を持つからである,という理由から個人,特にその選択が世界に影響を及ぼすことを避けることができないアメリカ合衆国大統領がアメリカの国益のためいかに振る舞うべきかについての提言となっている。

 提言として,1地域の勢力均衡を維持すること,2同盟や援助を駆使すること,3軍事介入は最後の手段とすることが挙げられている。

 中東と東アジアについて見ていきたい。どちらもアメリカと日本にとって依然として重要な地域となっている。中東は石油の産出地として特に海外から天然資源を輸入に頼っている日本にとって重要になっている。現在はアメリカがペルシャ湾のシーレーンを確保しているので安全に天然資源を輸入できるがアメリカが中東での紛争によりシーレーンを失えば日本にも打撃が来,独自に資源の確保をしなければならず筆者によれば日本がシーレーンの確保に動き結果としてアメリカの利害と対立することになる。その結末が前作での日米開戦となる。アメリカが2000年代に対テロ戦争としてイラクを叩いたためにこの地域での均衡が崩れイランが強国となる地盤ができている。そこでイスラム国に対抗するためにもイランと和解し,また別国に支援をすることで地域の勢力均衡を蘇らそうとする。

 東アジアで重要となるのが中国,日本,韓国の三国だ。やはりこの地域でも勢力均衡を維持するため日中どちらか一方が強大化しないように一方に完全に肩入れしない政策を取ることになる。この点を分かっていればアメリカと中国の接近にもあまり騒がずにも済みそうだ。翻ってアメリカが日本だけに肩入れすることもない。