徒然なるままに読書

書評から日々の考え事まで綴ります

古文化に関する深い洞察 書評『古寺巡礼』

あらすじ
大正七年の五月、二十代の和辻は唐招提寺薬師寺法隆寺中宮寺など奈良付近の寺々に遊び、その印象を情熱をこめて書きとめた。鋭く繊細な直観、自由な想像力の飛翔、東西両文化にわたる該博な知識が一体となった美の世界がここにはある。

 どんな本か?

  和辻哲郎が1918年に奈良を中心に仏像や絵画などに対面し感じた印象を記した本である。本書が出版された後戦争が始まったこともあり一時期絶版となっていたが改訂することで出版に至った。

感想

 写真が一部掲載されているとはいえ本文で触れらたものすべてに写真が挿入されているわけではないので図鑑などで確認しながら読み進めたほうがより筆者が受け取った印象を体験できるのではなかろうか。知識よりも実際に仏像と対峙しその時の体験があったほうが筆者との感じ方の違いや表現の巧みさを味わえそうだ。

 初版では若さゆえの情熱に迸っていたものが改訂で一部削除されていてその内容は解説に対比される形で載せられている。初版のほうもおもしろそうである。初版はちくま学芸文庫にて出版されているので書店で見かけたら手に取ってみたい。

 旅行をしたいと思わせる一冊だった。