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徒然なるままに読書

書評から日々の考え事まで綴ります

好きって絶望だよね… 書評『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』

書評
あらすじ    著:桜庭 一樹
その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは徐々に親しくなっていく。だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日――

どんな本か?

 2008年に『私の男』直木賞を受賞した桜庭一樹の初期作品で傑作。後にも続くどこかに暗い影を落とす青春小説。ライトノベルとして出版されその後一般文芸として単行本、文庫化された。

感想

 子供は実社会になんらコミットできない砂糖菓子の弾丸しか装備していないと早くお金という実弾を得ようと自衛官を志望するなぎさ。砂糖菓子の弾丸ばかり撃つ藻屑。家事を担当し一家の支柱となっているなぎさ。虐待に晒されている藻屑。対照的な二人だが,だからこそ親しくなっていく。はじめは藻屑を煩わしく思っていたなぎさが藻屑を救うため藻屑の父親と対峙する場面など心に来るものがあった。

 砂糖菓子の弾丸しか持たない子供が生き残りをかけて戦っている。勝つことが生き残ることができれば大人になることができるけれど負ければ人知れず死ぬだけだ。大人になることができた影で多くの名もない子供の死体が積み上がっていく。日本において虐待で一年間で死亡した子供は50人を超え,虐待相談件数は66,807件にも上る。普段は虐待などないかのように生活しているが人知れずまたは虐待だとわかっても介入できないような状態で起こっている。

 藻屑の父親に対する一言「好きって絶望だよね…」

 

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