徒然なるままに読書

書評から日々の考え事まで綴ります

資本主義は本当に悪か!? 書評『隷属への道』

あらすじ     著:F・A・ハイエク
本書は第一次大戦、第二次大戦、その間の大恐慌を契機にファシズム社会主義がゆっくりと確実に浸透していくさまを、克明に分析した古典的名著です。ケインズハイエク」、「大きな政府と小さな政府」といった昨今よく聞く対立軸は本書を契機に生まれたといってよいでしょう。そうしたステレオタイプから、イデオロギー的対立から、本書は読まずに批判、中傷、誤解されつづけてきましたが、現在ではその思想は正鵠を射たものとして、評価されています。

 

 どんな本か?

 第二次大戦終戦前に書かれ戦後の社会主義自由主義との対立を予見したかかのような内容であり、社会主義からファシズムが生まれその危険が自由主義の旗手であるイギリスやアメリカでも起こり得ることを警告する一冊。

感想

 一人あるいは少人数の人間が社会全体を見通し統制・管理ができるという集産体制における理性の傲慢を指摘し、経済的自由なき社会に政治的自由もないことを喝破する。社会はどんなに精密な予想をしていてもそこから外れ自ずから変化する。

 新自由主義の代表者にみられるハイエクだが自由放任の市場原理だけに任せるのではなく政府の介入が必要な分野ではその介入を拒まずむしろ歓迎する柔軟性も持ち合せている。またその学問領域は政治学、経済学、法学と多岐にわたっておりドイツでヒトラーが正当な手順で独裁者へとなり全体主義を帯びるようになったかについてかの国では法の支配が完全ではなかったことを挙げている。戦中の非常事態体制を完全に解体せず温存したままでその後の内政にあたったことを指摘している。

 同じく自由民主主義国で全体主義の萌芽の危険性を説いたフロム『自由からの逃走』も併せて読みたい。

 

<iframe src="http://rcm-fe.amazon-adsystem.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=microx-22&o=9&p=8&l=as4&m=amazon&f=ifr&ref=ss_til&asins=4393621824" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>