徒然なるままに読書

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書評『論語 増補版 (講談社学術文庫)』

あらすじ      著:加持 伸行
人間とは何か。溟濛の時代にあって、人はいかに生くべきか。現代と交響する至高の古典に、われわれは親しみ、学んできた。だが、さらに多くの宝石のように美しいことばが、人知れず眠っている―。儒教学の第一人者が『論語』の本質を読み切り、独自の解釈、達意の現代語訳を施す。

 

論語とは? 

 論語を読むのはこれで二度目だ。前回は齋藤孝氏の抄訳だったが、今回は加持伸行氏が全訳した本書にあたった。論語孔子やその子弟との対話が主に収録されており内容も重複している部分もある。孔子は徳により国を治める徳治主義を掲げており、徳の修養・人格の修養を人生の目的とするとともに子弟を陶冶し政治家として国政に関わらせることで少しでも政治を良いものとしようとした。

 

感想

 人格の修養を目的としているので珠玉の言葉が並ぶ。しかし、親や目上の人が謝った言動をしているとき幾度か諫言しそれでも行動を改めなければ大人しく追随しなさいなど儒教の影響が衰えた現在では承服しかねる部分もある。当時はギリシアでも人間は平等であるという観念は存在せず、自由人は自由人として奴隷は奴隷としてなるべく生まれてくるという観念が存在していた。「子曰く、性相近し。習い相遠し。」(p393)で人間の平等を説き後天的に格差が生まれることを述べている。孔子は徳を治めようと絶えず実践することを心懸け、その結果として「君主」と「小人」との差が生まれるのではないだろうか。加持氏独自の訳なのか「君主」を教養人、「小人」を知識人と当てている。その違いは道徳的修養の差である。ただ例外として「子曰く、唯上知と下愚とは、移らず。」と述べ天才と凡人との差は埋めることはできないとしている。

 前5世紀に東西で哲学が誕生したけれども一方で完全な平等な思想は生まれず他方で後の儒家に連なる一派で平等思想が生まれていた。中国は近代まで国家制度を含めてヨーロッパを悠に先んじていたことを改めて思い知らされる。

 

 

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