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書評『政治の起源 下 人類以前からフランス革命まで』

あらすじ    著:フランシス・フクヤマ
自由民主主義が機能し、政治に秩序が生まれるためには、「国家」「法の支配」「政府の説明責任」この3制度のバランスが鍵を握る。 

 

  上巻では主に国家の成立を見てきた。下巻は法の支配と政府の説明責任が中心となる。

 法の支配はヨーロッパで生まれた。人を超えた超常的な存在が想定されたとえ君主であろうとも神が作った法を遵守することを求められそれに反する君主はその座を追われ法の遵守が伝統となった。特にイギリスは早くから様々な裁判所が整備され国王も貴族に対抗するため国民に肩入れしたこともあり国王から国民まで広く法の順守が浸透した。よってコモン・ローの蓄積、法の支配が伝統となった。対照的なのはロシアである。侵略者モンゴルの支配が続き君主のモデルが西洋では法を順守する君主だったのに対し冷酷無比な君主となった。このことが法の支配を根付かせないだけでなく、貴族国民を問わない恐怖政治、絶対主義へと受け継がれた。

 政府の説明責任は国家権力と社会組織の均衡状態から生まれる。社会組織とはここでは、貴族や地主層である。国家権力が強すぎると強い絶対主義へ社会組織が強すぎると弱い絶対主義へとなる。前者がロシア、後者がハンガリーである。両者が均衡したとき社会組織が国家に対して説明責任を課すことができる。イギリスが好例である。イギリスは貴族が自己の特権保持ではなく国民の権益保持のために制限を掛けたマグナカルタに始まり異なる社会組織間で紐帯が生まれ団結して国家に当たった。加えて宗教面でも団結したためより強固なものになった。

 イギリスは3制度を整えたため以後自由民主主義が機能し政治に秩序が生まれる道を開いた。そして18世紀から抜きん出た国家となり覇権を握った。

 

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