徒然なるままに読書

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書評『仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない』

あらすじ    著:野口 悠紀雄
ビットコインをはじめとする「仮想通貨」が、世界で注目を集めている。
管理主体を持たない通貨、国家の枠組みを超えた通貨として従来の通貨を脅かしつつあり、
その技術革新はより広範な分野に影響を及ぼすとみられている。
金融資産の取引が、いまはない分散市場に移行する。
新しい資産が作り出されて、所有権の概念が変わる。
さらには、経営者がロボットに置き換えられたような企業が登場することさえありうる。
起こり始めた通貨革命のインパクトと、現代の通貨の問題点、
そして通貨革命によって経済・社会がどう変わっていくのかを述べる。 

 

  ビットコインはふつう日常で使う現金と管理主体が存在しない点で異なる。管理主体が存在することでその貨幣に信用がつき日常で流通し、貨幣価値の大きく変動しないので価値保存力もある。現在のビットコインを見ると価格は変動し投機の対象になっていて少なくとも日本で使う場面はないように思える。また送金の追跡の困難さから違法取引やマネーロンダリングの危険性が叫ばれている。しかし、世界に目を向けるとビットコインをはじめ仮想通貨が役割を果たしていることがわかる。例えばウクライナのデモの活動資金の寄付に使われたり銀行が未発達な国で少額決済に使われている。簡単にかつ瞬時に送金できることで使いやすくまた送金にかかる手数料が従来の手法に比べて安いことが魅力になっている。送金にかかる手数料が安いことで今までは利益よりも手数料が高くつきビジネスにならなかったものまでが日の目を浴びる可能性までもある。

 ビットコインP2Pのネットワーク全体で管理運営される。P2Pとは、中央サーバーが存在せず、個々のパソコンが直接に繋がっている集まりを指す。中央サーバーが存在しないため管理主体も必要としない。決済を繰り返すごとにブロックチェーンに取引内容が書き加えられ誰にでも公開されその取引が承認される。仮にここで改ざんなどを行おうとするとネットワーク全体の取引記録を記すブロックを改ざんしなければならず相当な技術を要する。改ざんするよりも正直な利用者となったほうが合理的であり改ざんなどは起こらないとされる。

 筆者はプライバシーを保護しながらも自由信頼を確保したアイデンティティの確立を急務とする。一主体として存在行動しているしていることは分かるがどんな行動かは分からない、このような状態なら課税も可能であり言論空間でも責任を負うこととなると考え、最終的にコインを選挙権に見立てた直接民主制の樹立の可能性を示す。

 直接民主制の委細は問わないとして、ビットコインをはじめとする仮想通貨は経済活動を一変させる可能性を秘めていてることは確かだ。筆者はインターネットなどIT革命が過小評価されたことを引き仮想通貨を過小評価するなと訴えるが、どんなに高性能であっても利用者に受け入れられないのなら普及しないことも十分あると言いたい。

 

 

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