徒然なるままに読書

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書評『知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ』

あらすじ     著:苅谷 剛彦
常識にとらわれた単眼思考を行っていては、いつまでたっても「自分の頭で考える」ことはできない。自分自身の視点からものごとを多角的に捉えて考え抜く―それが知的複眼思考法だ。情報を正確に読みとる力。ものごとの筋道を追う力。受け取った情報をもとに自分の論理をきちんと組み立てられる力。こうした基本的な考える力を基礎にしてこそ、自分の頭で考えていくことができる。全国3万人の大学生が選んだ日本のベストティーチャーによる思考法の真髄。 

 

  本書は知的複眼思考について書かれている。おおまかに<知的複眼思考とは?・身に付け方><思考力を養う読書術><問いの立て方・展開の仕方>で構成されている。

 知的複眼思考とは、物事を多角的に考えることを指す。それに対し単眼思考とは、物事を一面でしか捉えない、常識で縛られた見方だと言う。例えば、「エリート校の出身者は、幼いころから過酷な受験競争を勝ち抜いてくる。その過程で他者を蹴落としてくる。したがって、友達を作ることがうまくない。」という命題をどう考えるか。単眼思考の人はその通りだと肯くだろう。全くのステレオタイプで常識に凝り固まっている。しかし複眼思考の人はこう考える。実体験とのずれから「受験を勝ち抜いてきたものは人間的に冷たい。」という常識に何かが隠れているのか。競争の勝者を否定的に見なすことで、私たちの社会は、何を得ているのか、失っているのか。日本の横並びの意識が表れている、酸っぱいぶどうである、大衆のガス抜きの槍玉に挙がることでかえってエリートが安寧に統治できるようにしている、というように多角的に考えることができる。方法として、物事を多面的に捉える、関係論として考える、概念によって新しく焦点の当たる問題、隠される問題を注視する、問いを分解するが取り上げられている。

 思考力を養う読書術とは、筆者の言うことを鵜呑みにしないで批判的に読むことである。そうすることでただ知識を受容するだけでなく、思考の糧とすることができる。暗黙の了解、意見と事実を区別する、根拠が明確か、また可能性に基づくか、必然かなど。

 問いの立て方・展開の仕方について。「どのように〇〇するのか」ではなく「なぜ~か」の形で定立し、そこからなぜとさらに問うことで深堀していく。また問いを分解する。

  具体例「中学生の塾通いは増えているのか。」→「なぜ中学生の塾通いは増えているのか。」答えとして受験勉強が苛烈になっているからと考えたとする。この常識的回答に満足せず、なぜを繋ぐ。本当に受験競争は激しくなっているのか、またなぜ塾がこれだけ増えたのか、というように問いが広がっていく。問いを分解するについては、例「大学卒は就職難だろうか。」という問いに対して考える。まず大学卒を性差を意識して男女で区別、次に学歴校で区分し有名大と短大などとを比較する。このように初めの問いよりも問題を明確に表すことができる。これが問いを分解するということである。

 物事を多面的に捉える思考法に対する方法論であり分かりやすい。問いの立て方についても紙面を割いておりしっかりと意識することができる。方法論を学んだら次は巻末の図書一覧を参考に複眼思考を強化実践していきたい。

 

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