徒然なるままに読書

書評から日々の考え事まで綴ります

書評『BEATLESS』

あらすじ  著:長谷 敏司
今から一〇〇年後の未来。社会のほとんどをhIEと呼ばれる人型ロボットに任せた世界。人類の知恵を超えた超高度AIが登場し、人類の技術をはるかに凌駕した物質「人類未到産物」が生まれ始めた。黒い棺桶のようなデバイスを持つレイシア。彼女こそが人類の理解を超えた超高度AIによって作り出された「人類未到産物」だった。17歳の少年、遠藤アラトはレイシアと出会う。人間がもてあます進化を遂げた人間そっくりの“モノ”を目の前にし、アラトは戸惑い、疑い、翻弄され、そしてある選択を迫られる。信じるのか、信じないのか―。「ヒト」と「モノ」のボーイ・ミーツ・ガール。彼女たちはなぜ生まれたのか。彼女たちの存在と人間の存在意義が問われる。そして、17歳の少年は決断する―。

 

  従来の人間の在り方が人型ロボットhIEに取って代わられた世界で人間は大きく三派に分かれています。道具であるhIEを人類の隣人として共に歩もうとする一派、道具をただ道具として扱う一派、人間社会に侵食し人間の居場所を奪う敵とみなす一派。それぞれ主人公であるアラタ、友人であるリョウ、ケンゴと対応し敵対しつつも各々が自身の道を進もうとします。

 最後に主人公アラタはレイシアとの未来のために行動することを選びますが、これはパートナーとして受け入れることを意味しています。ヒトではないモノに恋愛感情を抱くなんてと思う人もいるかもしれません。しかし昔からモノに執着する話はたくさんあり、現代ではアニメオタクといったオタクがキャラクターに熱を上げていることを慮れば、そう現実味のない選択とは思うことはできません。

 ところで本作ではロボットでしたが移民に置き換えると似たような状況となります。移民と多文化的な生活を営もうとする派、ただ経済を支える道具とみる派、侵略者として排除しようとする派と考えられます。日本がますます少子高齢化を迎える中で移民に関する議論が盛り上がっていますが移民を受け入れるにも拒否するにもどちらも相応のメリット、デメリットがあり容易に答えは出せませんが、SFとしてだけでなく移民にまつわる物語として本作を読むことでより一層おもしろく感じるかもしれません。