徒然なるままに読書

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書評『政治の起源(上)』

あらすじ   著:フランシス・フクヤマ
本書『政治の起源』とその続巻は、政治制度発展と衰退の歴史的パターンを広範に扱う(略)。今日の政治にかかわる人々の多くは、歴史的文脈の視点を欠き、いま直面している問題が過去に起きた問題といかによく似ているかを理解していない。人類史を通じて、人の本性は変わっていない。「再世襲化」、すなわち支配階級が政治制度を私物化し自分の目的のために使おうとするような慣行は、中国の後漢時代や一七世紀フランスと同じように、現代でも普通に行われている。本書の日本での出版を通じて、日本の経験を世界の他のさまざまな社会の場合と引き比べるとともに、日本の諸制度の将来についての議論を活発化させる一助になってほしいと願っている。

 

  政治の起源をまだ人類が文明を築く前段階から考察します。今日の民主主義を基礎づけるものとして「国家」「法の支配」「説明責任」が挙げられます。人類はアリストテレスが喝破したように社会性をもち群れで行動していて他のグループとの戦闘もありました。狩猟とこのときの闘争が現代まで残る戦争のルーツ、人間の暴力性となっています。群れから親族集団、部族集団と規模が拡大していくうちに指揮系統、強制力を伴う権力が誕生し国家に近いものができあがります。国家はそれまでの部族社会とは動員できる人数、指揮を凌駕、圧倒し征服します。最初に国家が発生したのは中国でした。春秋戦国時代の絶え間ない戦争が鍵を握りました。同時代のインドでも国家はできましたが中国のような近代的特徴を備えるようになったのは後の時代になってからです。なぜ戦争が鍵になったかといえば、絶え間ない戦争が貴族の数を減少させ、庶民に活躍への道が開けたことです。そして戦費調達のための徴税、軍事訓練のための人口戸籍兵站管理の必要性から実力主義による行政組織が組織されました。ここに官僚制機構の原型が登場したのです。思想としては儒家、法家などがありましたが、どちらも法の支配、説明責任へとは繋がりませんでした。

 インドでは、ヴァイシャ制、カースト制度、バラモン教が大きな役割を担いました。国家でさえ身分制とそれにまつわる法律を超えた振る舞いはできず、中国とは反対に法の支配が芽生えました。

 

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