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徒然なるままに読書

書評から日々の考え事まで綴ります

書評『悲しき熱帯〈1〉』

著:レヴィ=ストロース

 人類学者レヴィ=ストロースがブラジル・インドでのフィールドワークを主にまとめた紀行文。紀行文として、学術書としても価値を有する。

  時系列がばらばらであり、巧みな比喩がふんだんに用いられているので他の本と比べて読むのに時間がかかりました。前半が旅の始まりとなぜ民族学者になったかが中心に書かれ、インディオとの社会の実地調査が後半に描かれます。

 渡航の際に第二次世界大戦下ということもあり真っ当なルートとはいえず一隻の船にたくさんの人が詰め込まれ睡眠がとれず十分な食事もない困難が待ち受けています。そして待ちに待ったブラジルに到着です。大学で教壇に立ちこのような印象を受けます。学生は最新の理論にばかり目がいく一方で博識でありたいと願い古典を読み漁るというある種の矛盾した行動を取る。これは数十年経った今でも変わらないのかもしれません。

 15世紀に西洋の植民者がインディオを征服しその数を激減させましたがそんななか今でも昔ながらの生活を営む一族と接触します。その調査で西洋との違いを多く目にします。例えば、子殺し嬰児殺しです。子を殺すことを厭わないため他の族から養子を得るために戦いをします。また彼が注目したのは神話です。彼らに伝わる神話が隷属の度合いというものがその社会の性質の完結度に応じて決るという彼が会得した事実を表しています。その神話は神が最初にグアナ族に農業を、他の族に狩猟を与え、残されたムバヤ族には他の族を抑圧し搾取する役を与えたというものです。このムバヤ族は現在でも他の族を隷属させています。

 彼は熱帯とインドとに人口の増加という問題点を見出し、それを解決するためにカースト制度が誕生したと考えました。異なる階級の人間集団がお互いに敵対的自由を行使を放棄することで各々が固有の自由を享受しようというものです。ですがあまりにも人口が増えたために、ある人間に人間性を認めない、人間性を剥奪された者以外が自由に振る舞うという解決策の誘惑に負けてしまいました。そして彼が恐れたのもこの人間による人間の価値剥奪が蔓延しつつあるアジアの状況に我々の未来の姿を見たからにほかありません。

  

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