徒然なるままに読書

書評から日々の考え事まで綴ります

書評『夜と霧』

あらすじ  著:ヴィクトール・E・フランクル
  著者は学者らしい観察眼で、極限におかれた人々の心理状態を分析する。なぜ監督官たちは人間を虫けらのように扱って平気でいられるのか、被収容者たちはどうやって精神の平衡を保ち、または崩壊させてゆくのか。こうした問いを突きつめてゆくうち、著者の思索は人間存在そのものにまで及ぶ。というよりも、むしろ人間を解き明かすために収容所という舞台を借りているとさえ思えるほど、その洞察は深遠にして哲学的である。「生きることからなにを期待するかではなく、……生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題」というような忘れがたい一節が、新しくみずみずしい日本語となって、随所に光をおびている。本書の読後感は一手記のそれではなく、すぐれた文学や哲学書のものであろう。

 

 強制収容所での凄惨な体験が綴られます。虫けらのように扱われまずは感覚、次に感情が失われるという私の想像の埒外にあることを思い知らされます。また筆者が精神科医ということで心理学の範疇から現象に対して意見が述べられ体験記と心理学の実例を兼ねた記述となっています。環境が十分でなく皮と骨だけになった状態でも生き延びた人と亡くなった人を分けたものはなにか?それは精神の豊かさです。希望と絶望が交互に訪れても心が折れないで希望を見出すその強さです。筆者で言えば、自身の妻が生きていることを思い必死で生き延び終戦まで持ち堪えました。ここで重要なことは実際の妻の生死ではなく筆者が妻を明瞭に思い描けたことです。

 限界状態の中で典型的な被収容者として振る舞うか、ありのままを振る舞うかでも大きな差異があります。後者は人間としての尊厳を失わず、筆者にどのような状況でも人は人間としての尊厳を失わないとすることを確信させまたこれが本書の要旨であります。

 

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