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1 このブログの目的
①書評
②映画
ルソーの思想 書評『世界の名著〈第30〉ルソー』
世界の名著〈第30〉ルソー (1966年)学問・芸術論 人間不平等起源論 社会契約論 エミール
- 作者: ジャン・ジャック・ルソー,平岡昇
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1966
- メディア: 単行本
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どんな本か?
平岡昇氏によるルソーの思想と作品についての解説とその著作から成る。収録作品は学問・芸術論,人間不平等起源論,社会契約論,エミールである。
概要
1 人間不平等起源論
ルソーは社会が成立する以前の自然状態を平和が保たれているとする。しかし,人類が協力していたというよりむしろお互いに孤立していたこと,強く関心を抱かなかったことに由来する。人々は自身の欲求に従って日々の暮らしを送るのであり,その時点では私有財産制度もなく人々は平等であった。人々は自然のままに生活していたのである。
しかし,一度知識を付け始めると欲望が芽生え誰からでもなく私有財産制が起り,その日暮らしの生活から将来を見据え溜め込み食糧が豊富に取ることのできる土地を持つ者とそうでない者とで不平等が起こる。また食糧生産に関する知識の有無が生産性の格差へと繋がり,結局は私有財産制と知識が人間の不平等の根幹を成すことになる。
2 社会契約論
人々がある程度の規模の集団を構成すると裕福な者は財と生命を守ってくれる強者を,そうでない者は生命を守ってくれる者を求める。その者へ全員が自身の権利を譲渡することに同意したので譲り受けた者は他者と比べ強権を得る。これが政府である。譲渡した者達は誰も権利を有せず平等であり,政府の決定に従うこととなる。政府に権限を譲渡するのは政府が人々の財産や生命を守ることを約したからであり,その約に反する場合には人々は現政府を廃し新たな政府を全員の同意を以て創出する。これが革命権である。この革命権がフランス革命の理論的根拠となり,フランス革命,ナポレオンの登場と世界史に衝撃を与えていく。
人民の契約によって誕生した政府が人民の財産や生命を圧迫するとはどういうことか。ルソーは集団の意志を一般意志と特殊意志に大別する。一般意志は,集団全体が幸福になるよう公共の福祉を第一に優先させるが,特殊意志はある集団の利害を第一に意思決定を行う。フランス革命の例では,聖職者や貴族といった特権階級を代表する特殊意志が政策を決定し一般意志が後退してしまったために集団全体の福祉を第一とする一般意志の復権となる。一般意志は集団全体の利害を代表するために誤ることのない無謬性を有し,どんな人民でも集団の一員なので一般意志が破壊できず,ただ後退することになる。
3 エミール
生まれたときから教育は始まっているとし,仮想の孤児エミールにどのような教育を施すかについての教育論。その目的は理性的な人物を育てるのではなく自然のままに育てることだ。早くから学問を始めることへの批判として田舎で伸び伸びと育てることに主眼を置いている。それは子供の必読書として「ロビンソン・クルーソー」を挙げることにも表れている。無人島でも苦なく生活できるよう生活の術を身に付けることを奨励する。エミールとともに農業を行い,そこから所有の概念や労働など必要な部分を身を以て体験させる。また農業だけでなく工業も実際に手で作ることを勧めている。学問においても,例えば地理ならば地図や地球儀で学ぶのではなく実際にその地形を見て観察するなど体験を非常に重視していることが分かる。成長し学問をすることになってもルソー流の教育によって肌に感じた経験を基に考えの起点とする。
感想
ルソーは自然に帰れという標語で知られている。私有財産制や知識を必要とする現代社会は人間本来の在り方とは異なるという主張から来るのだが,この主張に中国の老荘思想,とくに老子との共通点があるように思えた。老子は自然のあるがままを尊重しその思想は無為自然と呼ばれるようになった。自然に逆らわずにその日暮らしでも生活することができるのなら私有財産制などは必要なく人々の欲望も暮らしを送ることができる程度で済み,他人と比べることが無意味になる。その点がルソーの自然状態とマッチする。『エミール』で示されたように他者と積極的には関わらず田舎で自然のままに育てることがルソーの教育論だった。
ルソーは敬虔なクリスチャンだったが晩年には自然宗教に改宗した。人工物であるキリスト教から自然を敬う自然宗教への宗旨替えは論文を発表してから時代の寵児となったルソーの慌ただしい生活環境の変化への癒しや自身の理想とする自然状態を実践しようとする試みなのかもしれない。
資本主義は生き残れるか? 書評『資本主義の預言者たち ニュー・ノーマルの時代へ』
資本主義の預言者たち ニュー・ノーマルの時代へ (角川新書)
- 作者: 中野剛志
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- 発売日: 2015/02/10
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あらすじ
資本主義は崩壊するのか、生き残れるのか。
ケインズ、シュンペーター、ミンスキーなど、5人の経済学者の思想・理論を通して、今日の経済事情と資本主義の行く末について考察した一冊です。新書用に書き下ろしたプロローグ(約70ページ)では、ピケティの『21世紀の資本』をはじめ、ノーベル経済学者のスティグリッツ、クルーグマンなどの最新経済論文を取り上げ、世界を覆う経済危機について、詳細に解説しました。そして世界は、「長期停滞と失業」という、経済成長が望めない状態、“ニュー・ノーマルの時代”に突入したことを、明らかにしています。
その大きな要因は極端なグローバル化と金融資本主義です。では、今後さらにグローバル化が進んでいくと、どうなるのでしょうか。
ピケティの『21世紀の資本』が話題ですが、あの大著を読まなくても、この本を読めばピケティの主張だけでなく、今の資本主義の問題がまるごとわかる!
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思考停止しないために 書評『ハンナ・アーレント』
ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者 (中公新書)
- 作者: 矢野久美子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/03/24
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あらすじ
『全体主義の起原』『人間の条件』などで知られる政治哲学者ハンナ・アーレント(1906‐75)。未曽有の破局の世紀を生き抜いた彼女は、全体主義と対決し、「悪の陳腐さ」を問い、公共性を求めつづけた。ユダヤ人としての出自、ハイデガーとの出会いとヤスパースによる薫陶、ナチ台頭後の亡命生活、アイヒマン論争―。幾多のドラマに彩られた生涯と、強靱でラディカルな思考の軌跡を、繊細な筆致によって克明に描き出す。
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